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■ 夢見る頃を過ぎても 10

「っ、ユキ……っ。もっと、……して……っ」

「もっとえっちなことして欲しいの?」

 露骨な問いかけるしてくるユキに、顔に熱が集まるのを感じながらシロはこくんとうなずく。

「んー可愛い」

 嬉しそうな声でそう言ったユキは、シロの腕を引っ張って抱き寄せる。ぐっと身体を持ち上げて、寝そべったままのユキの上に脚を広げて馬乗りにさせられた。

「……っや、ユキ、これ……っ」

 腰を持ち上げられて浮いた脚の間の後孔にぴたりと性器を押し付けられる。

「シロさん、このまま腰を下ろして。……大丈夫だから」

 そう言ってシロを見上げたユキは色気たっぷりに微笑む。後戻りのできなくなったシロは、泣きたい気持ちを抱きながら息を飲んでそうっと腰を沈めた。
 ぬるっと先が入り込んで、狭い部分が押し広げられる。だが少し進んだだけで、その熱さと大きさに恐くなる。止まってしまうと、進むことも戻ることもできなくなった。そこで動きを止めたままシロは、半泣きになってユキを見下ろす。

「んぅっ……ユキ……っ、……助け……っ……」

 縋るような視線に目を細めたユキが、シロの腰に手を添える。そのままそっと腰を沈めてくれるのかと思って力を抜いたシロを、ユキはいきなりずぷりと下から突き上げた。

「やぁぁぁぁ……っ。ぁ……ぅあ……」

 あまりの衝撃に体重を支えられなくなったシロは、力なくだらりとユキの上に倒れこむ。

「ごめん。我慢できなかった」

 泣き出したシロの腰を押さえつけてユキはぐいぐいと腰を突き上げる。
 ひっく、ひっく、と嗚咽を噛みしめるシロの髪を掻き抱いてキスを繰り返しながら、ユキはいつもよりずっと結合が密な状態でシロの奥を激しく穿つ。中いっぱいにユキのものが入り込んでいるのを生々しく感じ、激しく掻き回されて、シロの膝や腿はすぐにがくがくと震え始めた。

「ぁっ、……あ、ぅあ、……ぁ、ぁやっ……!」

「っは……、シロさんのなか、……すごく……きもちいよ……」

 低く、しかし確かな大きさで鼓膜を打ったその声は、情欲に濡れて掠れていた。激しい出し入れを繰り返されて、摩擦の快楽がどろどろに溜まり始める。ふらふらと定まらないシロの腰を腕を絡めて捕まえたユキがぐりぐりと奥をえぐる。

「突くたびになかが……すごい、絞まる……」

「んっ、ぁ……ぅあ……、ゆきっ……、ぁ……っ、い、ぁ、……っ」

 漏れる湿った音が耳を打つ。様々な角度で突かれて、ふらつく手をシロはユキの腹に突く。けれど余計に中がいい具合に圧迫されて、恍惚がぞくぞくと背筋を駆け上がる。突いた手がふるふると震えた。

「ユキっ、んんっ……ふ、……っ」

 力が抜けてぺたりとユキの身体の上に倒れたシロは、覆いかぶさるようにしてユキにキスを求める。
 がむしゃらに舌をねじ込んで唇を貪るシロを、ユキは潤んだ瞳で見つめながら下からまた激しく突く。

「やっ、ぁ……! ぁ……っひ、……ぁ」

「可愛い……俺、シロさんのこと大好きだよ……。このまま一緒におかしくなっちゃいたいくらい」

 シロのおでこにおでこをくっ付けたユキが嬉しそうな、それでいて泣きそうな声で訴える。とろんと潤んだ紺青の瞳がたまらなく色っぽかった。
 このままユキを泣かしたいという歪んだ欲望がシロを支配する。ユキの頬を両手で包み込んで、キスをしながら中を締め付けると、ユキの性器の感触が伝わって幸せに満ちた快楽が波のように広がった。

「っ、シロさんだめ……っ。も、やば……っ」

 じたばたと悶えるユキを強引に押さえつけて、欲望に流されるまま夢中で腰を動かす。シロのせいで乱れるユキをみていると不思議なくらい気持ちが落ち着いて、好きという気持ちが溢れた。

「ぅ、あぁっ……っ、ぁ、……んっ、……ぁ、ぁ……」

「は、……っ、きもち、……っ」

 眉根を寄せたユキがシロの腰を掴んでがつがつと激しく攻め立てる。ぎしぎしとベッドが軋んで、シロの身体ががくがく揺れる。奥の奥まで貫かれ、歯の根も合わないほどの絶頂に襲われる。シロが思わず全身に力を込めた瞬間、最奥でユキが熱いものを放った。

   +++

 いつもはすぐに起きて濡れたタオルを持って来てくれるユキが今日はぐったりとベッドに沈んだまま荒い息を整えていて、シロを抱きしめたままずっとその手を離そうとしない。
 それでもしばらくすると、抱きしめたままシロの鼻をかぷりと甘噛みして、それから頬やおでこにキスをしてくれた。

「このままだと、くっ付いちゃうよ……」

 シロがユキの腹の上に放ったものをそのままに抱きしめるものだから、それがシロの腹をも汚している。そのうちパリパリに乾いて接着剤のようになって、ユキとシロのおなかがくっつく。そう指摘したシロにユキは意味深な笑いを投げかけた。

「俺はシロさんとならくっ付いちゃってもいいよ。むしろもう二度と離れられない程にぴったりくっついて、二匹でひとつとして生きていきたいくらい」

 笑みを食んで唇を寄せたユキに、シロはぷくりと膨れて見せた。

「やだよそんなの……。ひとつになっちゃったら、ユキがユキじゃなくなる」

 その言葉にユキは不思議そうな顔をして首を傾げる。

「シロさんは、俺が俺な方がいいの?」

「うん。俺、ユキ好きだもん。ユキの瞳もユキの髪も、毛並みも身体も、みんな好きだよ」

 初めて3歳のユキを見た時からずっと抱いてきた思いをシロは満足げに口にする。そんなのは今更のはずなのに、ユキはそれでも嬉しそうに目を細めてからじっとシロを見つめた。

「俺もシロさん大好きだよ。ずっとずっと愛してる」

 シロの顔を覗き込んでくるユキの瞳は穏やかに澄んでいて、ユキの生まれた頃の秋の空そっくりだった。
 ずっとずっとこんな幸せそうな顔をしていて欲しいとシロは願う。

「うん。俺もユキ大好き。誰よりも愛してる」

 そう言って唇を重ねた。

夢見る頃を過ぎても <完>

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