■ 夢見る頃を過ぎても 9
ユキは何度も何度もシロに顔を近づけ、その唇を奪った。
「ユキ、ユキっ……」
その度にシロはユキが欲しくてたまらなくなって、その背中に手を回して指先を食い込ませる。そんなシロの様子にくすりと微笑んだユキが首筋に口を押し当てて痛いくらいに吸い上げた。
「ッ……ぅ、」
じんとした痛みにシロが顔をしかめると、ユキは最後に牙を立てて噛み付いてきて歯型まで残す。
痛いのに、じわりと目尻に浮かんだ涙が何だか別のものまで刺激して、腹の奥で欲望が熱くどろりと溶けた。
「シロさん、キスして」
肩や鎖骨に鬱血の痕を残していたユキが物欲しげな顔を近づけてくる。そんな甘えん坊なユキが可愛くてたまらなくなって、シロは伸ばした手をユキの首筋に絡めて、求められるままにキスをした。
ユキの唇を舌で割り開いて、綺麗に並んだ歯列を舐める。
「もっと舌入れて……」
ユキはシロの舌を甘噛みしながら、上目遣いで甘えてくる。そんな風に見つめられるとシロはくらくらして逆らえなくなる。
「んっ……んく……ぅ」
ユキの言葉通りに舌を使ってユキを求める。喉へと流れ落ちた唾液をこくんと飲み干すと、ユキが心底幸せそうに頬を緩めた。
「ん……シロさん、可愛い……」
「ユ、キ……っ」
ユキがあまりに幸せそうで、それを見たシロの胸もいっぱいになる。なおもユキの舌に舌を絡めて甘えていると、シロの手首を掴んだユキが自分の下着の中へとシロの手を移動させた。
「もっとえっちなシロさんが見たい」
「っ、ゆき……っ」
「俺のこと欲しくてたまんないって顔でおねだりして? そしたら俺、幸せすぎて死ねる自信ある」
触らされたユキの性器は手の中でびくびくと元気に動いていて、それを感じただけでシロのあそこがきゅうっと疼くのかわかる。まだ何もしていないのに早まっていく呼吸。
「……っ、ゃ……っ……」
唇を噛んでこらえながら訴えたシロの声に、ユキがわずかに眉を下げて悲しそうな表情を作る。
「シロさん……嫌……?」
熱くなった頬を隠したくてうつむきながら、乱れた息も絶え絶えにシロは訴える。
「ゆ、き……っ。死んじゃ、やだよ……」
シロがそう言って潤んだ瞳を向けると、握らされたままの勃起がさらにむっくりと大きくなるのがわかった。手のひら越しにそれを感じ取ってしまい息を詰めると、ユキは嬉しそうに心底愛おしそうに目を細めた。
「俺、シロさんにならいつ殺されてもいいよ」
囁きながら耳をくちゅくちゅと舐めてくる、音と感覚に思考が翻弄される。大好きなユキが求めてくるんだから何だっていいじゃないかという気になって、シロは両脚を投げ出したユキの下着を引き摺り下ろしてそのまま脚の間に顔を埋めた。
「っ、……ぁ……シロさ、……っ」
口いっぱいに性器を含んで舐め上げると、ユキが色っぽい声を出してシロの名を呼ぶ。はあはあと呼吸を乱すユキに、シロの興奮にも火が付く。
ユキをもっと悦ばせたい。その思いで頬張って舌を這わせていると、頬を赤らめたユキがとろんとした顔でシロを見下ろした。
「っ、は……。シロさん、可愛い……」
何度目かわからない呟きを口にしてシロのあたまを掻き抱いてから、ユキはころんとベッドに寝そべり、器用に身体を反転させる。そのままシロの股間に手を伸ばして、下着の上から性器に舌を這わせた。
「んっ、……ぅ、ふっ……っ」
「シロさん、すごいどろどろだね……」
くすくす笑いながらユキはそう言って、下着を脱がせ、シロの腰を抱き寄せて若干強引な角度でシロのペニスを口に含んだ。
「んっ、んんんっ……!」
目を見開くシロに頓着せず、ユキは口で器用に性器を扱き始める。唾液をぬるぬると塗りたくる舌。程よい強さで刺激を与える唇。隙間なく吸い付いてくる粘膜に翻弄されて、シロの身体は無意識のうちに逃げを打つ。
「逃げちゃだめ」
すぐにそれを察したユキがシロの腰を抱きかかえ、より深くまで口に含む。
「んっ、ふ……ぁ、あ……っぅあ、やっ……」
じたばたと暴れるシロの口から、ユキのペニスが逃げていく。根元まで深々とくわえたユキは、亀頭を舌で前後に刺激しながら指で尻の奥を割り開いた。
「ぁう、……ちょっ、待っ……んっ……」
待って、と口走ったシロとは対照的に、ずぷっと指先を咥え込んだ窄みは、ひくひくと美味しそうにユキの指を飲み込んだ。
「ぁ、……んっう、……ぁ、ぁ、……」
「シロさんのここ、襞が絡んで吸い付いてくるよ……もっと、もっと欲しいって、ずっと言ってる……」
ぐちゃぐちゃと卑猥な音を響かせてユキが指の出し入れをする。折り曲げられた指が内壁を引っ掻くたび、ひくひくと中が収縮を繰り返すのがわかった。
「ぁ、やっ……んぅっ……ぁ、ぁ、あ……!」
いつの間にか二本の指を埋め込まれ、中を荒っぽく掻き回しては膨らんだしこりを焦らすように刺激してくる。びくっと敏感に反応した性器をユキは舌で何度も舐める。
「ユキっ……」
腰が砕けそうな快感に、シロはユキの脚に縋って震える。そんな姿をユキは愉しそうに目を細めて見つめた。全身をぴくぴくとさせて続きを願いながらも、どうしても言葉に出せないシロの中に、ユキは指を根元まで押し込み、抉るように奥を突く。
「っあ、……いっ、ぁ……ぁ、ぁ……ぅ、っく」
「ね、シロさん。どうして欲しいか言って?シロさんがその可愛い口でおねだりしてくれたら、なんでも、どんなことでもしてあげる」
「ぁ……う、ゆき……っ、あ」
にっこりと笑うユキは、15年前から変わらぬ甘い声でシロに囁く。その堕落への誘いに泣きたくなりながら、シロは必死にユキの首に向かって震える両手を伸ばした。